RQマガジン Qマガ!
レーシングインタビュー百番勝負
2009年05月09日
【インタビュー】2 鈴木亜久里☆"四文字ワード"を語る?



「諦めなきゃいいじゃん。
諦めなかったら挫折なんてしないよー」




PHOTO/OSAMU FUJIMARU

 

「セックス・レーシング・ロックンロール? 違うよ、レーシング、レーシング、レーシングだよ!」とインタビュー前編ではスーパーGTの魅力を語ってくれた”ミスター・レーシング”・鈴木亜久里。今週は、端からは数奇にも見える彼の人生のエッセンスと、前に進む力の源泉となる「亜久里・ルール」を聞きました。それでは、シグナルブルー!



●亜久里さんは、挫折したことはないんですか?


「ないよ(即答)」


●わっ。ないんですか?


「俺、30でF1に乗る、35でレーサーを辞める、45でF1チームを作る、決めたことは、全部できちゃったもん。決めたら現実になるよ」


●なんでそう決めることができたのでしょう。 


「なぜだろ? それは自分でもわからない、ははは。だって決めちゃったからさ、俺。いまの夢は50までに50億貯めること」


●ひぇ?


「能登半島を買って暮らしたいね、それは冗談だけど(笑)。あと2年しかないんだけど、たぶんできるよ、……決めたから(笑)」


●その強気さというか……夢が叶わなかったことは人生に一度もないですか?


「あ。一個だけある。フェラーリのF1ドライバーになれなかった。交渉の席にはついたんだけど。それだけかな」


●(それだけって……)あのぅ、こちらの調べでは、23歳の時。活動資金が底をついたことがあったそうですね。18歳と21歳の時に全日本カートで王者になり、将来有望、人生順調、ところが、F3のシートを得ることができなかった。


「ドライバーというのは、上は、お金をもらって乗る人から、下は、自分でお金を持ち込んで乗せてもらう人までいるんだ。まぁ、椅子を得るってことでいえば、レースの世界じゃなくても同じことだと思うけどね」


●ええ。その時に、ミッションオイルの輸入をやってらした。


「気分転換でもするか、って、叔父とグアムに遊びに行ったんですよ。そこで、1本75円のオートマティック・トランスミッションのオイルを見つけてね、これを日本で販売しようと思いついた。いいオイルだったんだよ。でもまだ日本にはなかったから売れるんじゃないかなと思って。ドラム缶で買ってきてさ」


●え。ドラム缶で買ったんですか?


「しょうがないじゃん(笑)。とにかくたくさん売ってくれ、と頼んだら、向こうはワンロットじゃないと売れないというからさ。船で到着するのを待って、港に取りに行って、日本でボトルに小分けして、ラベルのデザインを自分でやって、自分で貼り付けてね」


●めちゃくちゃ家内制手工業ですね!


「そうだよ。デザインを考えるのは楽しかったな。それから、スーツを着て、ネクタイして、自動車用品販売店を回ったんだよね。置いてください、って。電話してアポ取って。全部自分でやったんだよー。面白かったなー。いや、面白かった」


●あの鈴木亜久里がそんなことをやっていたなんて! その時、レーシングドライバーなのに、全然方向違いのことをしていると不安にならなかったですか?


「いや全然。なんで? それがレーシングの世界につながる道だと思っていたし。楽しんでやっていた。レースだけをやっていたら決して会えるはずのない人に会えたしね。当時の人たちとは今でもつきあいあるよ。いろんな道があるんだから。回り道しても、最終的に、目的地にたどり着けばいいんでしょ?」


●挫折とは思わなかった……?


「あー、挫折って、諦めるから挫折になっちゃうんだよ。諦めると挫折が確定するんだから。だったら、諦めなきゃいいじゃん。諦めなかったら、挫折なんて絶対にしないよー」



●その頃、「将来、F1に乗ります」とあちこちで公言していたそうですね。


「『おまえ、なにバカなこと言ってんの?』とみんなに笑われた。トムスの舘秀信さん(※60年代から日本のレースに関わってきた重鎮。現TEAM TOM'S 代表)によくからかわれたからね。でも、大切なのは、決めること。やると決める。決めたら口に出して言っちゃう。俺のマニフェストってやつよ。あとでいわなきゃよかったなーって思うことも多々あるんだけど(笑)。しょうがないよ、いっちゃったんだから、あとはやるだけだから」


●それがレーシングスピリット。


「そう。だから、オイルを売りながらでも、これを楽しくやれば、F1につながるって思ってたもんね。たとえば、いま経済がしんどいというじゃない。でも『経済危機です』なんて、テレビのアナウンサーが深刻な顔していっていて、みんなが『そうなのか』とお金を遣わなくなったら、ますます悪循環じゃない。みんながお金を遣うから経済がよくなるってのが経済の仕組みでしょ? なんでわざわざ悪い方、悪い方へやっちゃうのかなぁ〜とよく思うよ。笑って前を向いてやっていれば、好循環になるんだよ」


●たしかにそうですね。亜久里さんは、いまはチーム監督として、経験豊富な先輩ドライバーとして、アドバイスを求められることも多くなってきたでしょう。どんなふうにアドバイスするんですか?


「俺、話をふんふんと聞いて、4文字しか言わないよ。『がんばれ』(笑)。それしかないじゃない? 走るのはその人だし。それだって、レーシングの世界でも他の世界でも一緒。コックさんみたいなもんだよ。結局、目の前にある材料でなんとか料理を作るしかないじゃない?」


●あぁー。では、レースは道具を使うスポーツです。道具がよくないと、自分が持ってる力が発揮されないケースがたくさんあると思うんです。自分以外のせいにしたくなる時が。


「クルマが遅かったら? 『しょうがないな、このポンコツ!』ってポーンと叩くだけよ(笑)。叩いて終わり」


●え。それだけですか?(笑)


「そうだよ。あとは、がんばれ。それで行けばいいんだよ。それがレースだよ!」






PROFILE●鈴木亜久里

1960年9月8日、東京生まれ。11歳でカートレースデビュー。'88年にF1デビューし、90年日本GPでは日本人初の表彰台に。レーサー引退後は後進の育成に力を注ぐ。06年からは、F1チーム・オーナーとしても活躍。日本を代表するレーシング・マン。http://www.super-aguri.co.jp/


<現在、鈴木亜久里さんからレースクイーンへのピット指令!>


レースクイーンにはレーサーの魅力をアピールする広報力も必須です。というワケで、パドックの中でしか見る事の出来ない、あなただけが知っている各チームのレーサーの魅力をアピールしてください』

 

発令中です!

レースクイーンたちの回答は、こちら!

 




________________________________


当コラムでは、レーサー、ライダー、チーム監督ほか、レースに愛を注ぐさまざまな人をインタビューしていきます。彼らはレースから何を学んだのか、レーシングが男をどう磨いていくのか、に注目します。次週はTVのNASCAR解説でもおなじみの福山英朗さんキミは人生を擲(なげう)てるかい?」(仮)をご期待ください。


(構成・文/スケタケシン



<< PREV  |  1  |  NEXT >>
カレンダー
‹‹    2024年04月    ››
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930