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レーシングインタビュー百番勝負
2009年05月02日
【インタビュー:1】 鈴木亜久里☆スーパーGTは「恋」に似てる


「スーパーGTは障害物競走みたいな感じ。

恋の駆け引きに近いよね」


PHOTO/OSAMU FUJIMARU


●F1とルマンの両方で表彰台に昇って、F1チームのオーナーまでやった人に聞くのもどうかという質問なんですが(笑)、レースって何が面白いんですか?


「あらためて聞かれると、意外と難しい質問だな(笑)。そうだね、それは『緊張するところ』じゃない? 小学校の運動会でかけっこがある。前の日からドキドキしたでしょう? ヨーイドンの直前なんて、ものすごくドキドキじゃない? あれよ、あれとまったく同じだよ」


●まず、前夜の楽しみが大きい、と。


「まぁ、心臓がバクバクしてジッとしてられない、なんてことはならないけどね、こっちはプロだからさ。あの緊張感が快感になっちゃっててさ、何度でも味わいたくて。だから、レースするんだろうな」


●それって「セックス、ドラッグ、ロックンロール!」ならぬ、「セックス、レーシング、ロックンロール!」って感じですね。


「違うよ。レーシング、レーシング、レーシング!だよ(笑)」


●じゃあ、勝った日なんかはものすごい状態になりますね。


「やっぱり、勝ったらうれしいよね、めっちゃくちゃうれしい。何位ぐらいになれるかな? ちょっとでも上でゴールしたいな、って思ってスタートラインにつくわけよ。スーパーGTもF1も、運動会のかけっこと同じ。それが表彰台に乗れたら、優勝したら……めっちゃくちゃうれしいからね。気持ちが爆発するよね」


●そんな夜はチーム全員で祝杯を上げて飲みまくりですか?


「ううん、全然。ゴールして、やったー!っつって、はい、後かたづけ! 移動! もう、頭ん中じゃみんな次のレースのこと考えてるんだけどさ(笑)」


●(笑)。てっきり、朝までドンチャン騒ぎなんだと思ってました。


「そんなもんよ、レースをやる人間って。終わったことはすぐ忘れるんだよね。はい、次、次のレース! となる」


●さすがレーサーという人種は前へ、前へ。振り返らずに突き進む人たち。爪の垢を煎じて飲みたいです。


「だって、それ以外の手は、ないじゃない?」


●さて。今年は、「AUTOBACS RACING TEAM AGURI」を率いて、スーパーGT500(ドライバー=ラルフ・ファーマン/伊沢拓也、マシン=NSX)のチーム監督として参戦ですね。

今年のスーパーGTは面白いよー。重量規定が変更されて、ガチ勝負になったから。去年のレギュレーションはどこか不思議だったからさ」


●速ければ速いほど、マシンにウェイトが積まれるルールで……。


「ウェイトを減らすために、わざと遅く走る作戦まで登場したからねぇ」


●今年はドライバーズポイント毎に1~2キロのウェイトハンデはありますけど、最終戦はウェイトハンデなしですし。


「今年は、コース上の純粋な速さバトルが繰り広げられるよ」


●GT300クラスの、カローラ、ポルシェ、ランボルギーニ・ガイヤルド、フェラーリから、GT500クラスの、ニッサンGTR、ホンダNSX、トヨタSC430(レクサス)まで、僕らが乗れる可能性のあるクルマがレースしているのが、見ている側には面白いです。


「俺の□□□がぁ〜!!! みたいな、感情移入ができるでしょ」


●レースをやってる側にとっては、スーパーGTはどこが面白いですか?


「速度差がある2つのクラスが混走しているのが面白い。GT500側から見たら、障害物競走みたいな感じ。ビュンといって、バンバンぶっつけながら抜けばいいけど、向こう(GT300)だってレースをしているんだから、そうはいかない。そこがミソ。やさしく抜いてあげなきゃなんない。コースレイアウトのどこで出くわすかは、運の部分もあるし、駆け引きもあるし、まぁ、恋みたいなもんですよ」


●恋? スーパーGTは、恋模様大会だったんですか!!!!????


「そうだよ。あとはなにより、スーパーGTはお祭りとして楽しいよね。たとえるならば、レースという ”エビ” がドーンとあってさ、レースクイーンという ”ころも” がついてて、いろんなイベントが ”芋” やら ”ナス” みたいなもんで、お腹一杯になれる”天丼”みたいなもんだよ(笑)。みんな天丼、好きじゃん?」


●スーパーGTが天丼ならば、F1は?


「ステーキ肉を一枚出されて、喰え!って迫られている感じ?」


●”ころも”はなし?


「ないない(笑)、血が滴ってるし」


●日本のスーパーGTは、世界最速のハコもの(市販車改造)レースと言われますけれど、世界一なんですか?


「どうなんだろうね。ドイツでツーリングカー選手権を見ている人はそれが世界一だと思っているだろうし、アメリカでNASCARを見ている人は、NASCARが世界一だと思っているしさ。レースってそれでいいんじゃないのかな。目の前で走っている、『このレース』が世界一のレースなんだと思うよ」


●なるほど! 最後に今年、スーパーGTを楽しもうと思っている読者のみなさんにメッセージをお願いします。

「何度もおかわりして食べたくなるような天丼を作っていきたいと思います。ほんとに、レースも楽しめるし、イベントも楽しめる素晴らしいお祭りですから、みなさん、ぜひサーキットに遊びに来てください」



PROFILE●鈴木亜久里

1960年9月8日、東京生まれ。11歳でカートレースデビュー。'88年にF1デビューし、90年日本GPでは日本人初の表彰台に。レーサー引退後は後進の育成に力を注ぐ。06年からは、F1チーム・オーナーとしても活躍。日本を代表するレーシング・マン。

http://www.super-aguri.co.jp/


当コラムでは、レーサー、ライダー、チーム監督ほか、レースに愛を注ぐさまざまな人をインタビューしていきます。彼らはレースから何を学んだのか、レーシングが男をどう磨いていくのか、に注目します。
次回(来週)は、鈴木亜久里インタビューpart2「諦めたときに『挫折』になっちゃうんだよ」(仮)をお送りします。また、亜久里さんからレースクイーンへのピット指令も登場! ご期待ください。

(構成・文/スケタケシン








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