RACING INTERVIEW★ROUND#04
「F1のオファーが来るなぁと思ったら、
いまのところまだ来てないです(笑)」
国本京佑 KEISUKE KUNIMOTO
どうやったらF1ドライバーになれるのだろうかーー。
「登竜門」のひとつは「澳門格蘭披治大賽車」という名のレースだ。この見慣れぬ文字の羅列。この意味を瞬時にわかる人はいるだろうか。勘のいい人は、中国語? 中国? まではピンと来るかも。最初の二文字を「マカオ」と読むことを知っているかもしれない。答えは「マカオグランプリ」だ。
毎年11月にマカオ市街地コースで行われる「澳門格蘭披治大賽車」の「三級方程式」、これこそが、F1ドライバーへの登竜 門にほかならない。これは、その年の各国のF3(中国語では三級方程式)シリーズの上位成績者が集う 、”天下一武道会”イベントなのだ。
PHOTO/FUMITAKA KUSUMI
昨年、2008年11月に勝ったのは、国本京佑。19歳と10か月9日での優勝は、史上2番目の若さだった。これ、もっと盛り上がってもいいんじゃないのか? 現在、『Team LeMans』で、『全日本選手権フォーミュラ・ニッポン』に出走中の将来有望な若武者イケメン君に、貴重な15分間の電撃インタビューです。
× × ×
「必勝法は”予習”です」
●あの勝利を報じるの記事のなかで、年齢が近い「フィギュアスケートの浅田真央さんや、ゴルフの石川遼さんがライバルだ」という発言が印象的でしたね。
「はははは。あれは、記者の方が勝手に書かれたんじゃないかな(笑)」
●ありゃ。そうなの? じゃあ、改めて聞きますけど、ライバル?
「えーっと、違いますね(笑)。競技も違いますしね。モータースポーツも面白いので注目してください!」
●ははははは。さて。栄えあるマカオグランプリですが、どうやって勝てたのでしょう。一番の勝因は?
「予習をしっかりしたからです。どのコーナーで、クルマの動きがどんなふうになって、というシミュレーションが全部完璧でした。チームもそういうデータを持っていましたし。だから、予習通りに走ったら……勝てた」
●めちゃうれしかったでしょ?
「うれしいよりも、レースを終えてからはなんだかホッとしました」
●初挑戦で走るマカオのコースで、いきなり優勝するのはたいへん……じゃないですか? 異国の市街地コースですし。
「うーん……初めての気がしませんでしたね(笑)」
●えー、そこまで思えるものなの?(笑)
「僕はそう感じましたね」
●逆に言えば、そこまで徹底的にシミュレーションするんですね。
「そうです。チームのおかげです」
●やっぱり、レースにおいて予習は相当重要。
「うん。大事ですね。すべてをイメージして。何度もやってみて。当日は、その通りにやるだけですね」
●となると、予習こそが必勝法ですか。
「必勝法です(笑)」
●イメージを繰り返すうちに飽きちゃったりしません?
「それはないですよ(笑)。頭の中でずーっとやっていました」
●行きの飛行機のなかでも?
「ええ。あ、寝てたかな(笑)」
●F1ドライバーの人も、初めてのコースは、いまやプレステのゲームをやるという話を聞きますけれどね。
「プレステはすごいリアル! でもマカオはないですからね」
●国本さんがイメージするときの精密さはどれくらいなんですか? たとえば、表彰台でガッツポーズするところや、スタッフから胴上げをされる場面なんかもイメージするものなんですか?
「そこまではやらなかったかな。コース上だけで(笑)」
●でかいレースを勝ったのにずいぶん淡々としたお話っぷりのわけは……目標が先にあるからなんですよね?
「必ずF1に行きたいですね」
●そこなんです! マカオグランプリの覇者、上位入賞者は、F1ドライバーになっていく。いわゆる登竜門というヤツですけど。
「そうですね」
●ありていにいえば、セナも勝ってる、シューマッハも勝ってる、佐藤琢磨も勝ってる、そこに歴代2位の若さで勝ったわけですから……。
「ええ」
●F1パイロットへの自信や期待はさらに膨らみましたか? 急な話が来たりはしないんですか? 「乗らないか?」とか。
「来るなぁ~って思ってたんですけど、今のところ来てないです(笑)」
PHOTO/FUMITAKA KUSUMI
●F1への道は、ご自身でどうイメージしてるものですか? 実はそれが一番聞きたくて。
「外国のF1関係者を含む、多くの人が見ているところで、いいレースをするのは大切なことですね。そういう機会が増えればいいと思います。でもそう簡単にはなれないものですからね」
●国本選手はいま20歳ですよね、もっとアツくグイグイした感じを想像していたのですが、わりと淡々とした冷静な感じなんですね。
「いつもは普通の大学生と変わらないですよ(笑)」
●あ、そんな、就活中の学生みたいなことを(笑)。
「何事をするにでも冷静になることは大事ですよね。もちろんアツくなることも大事ですけど」
●では、F1のオファーがまだ来ていない、国本さん自身はマカオの勝利以降、どんなことを考えて、レースをしているのですか?
「今年はFポン(フォーミュラニッポン)に乗ってますけど、ルマン24時間にも乗ったり……いろんな経験を積んでいきたいですね。とにかく、チャンスがあればさまざまな海外のレースに乗りたいです。僕は外国のレースの経験がまだ少ないですから。ルマン24時間はホントに楽しかったし、なにより勉強になりました」
●ブログには楽しそうな様子がアップされていましたね(笑)。主戦としている、Fポンでいえば、F3からFポンに変わって、一番の違いはどこで感じるものなんですか?
「やっぱりエンジンパワーと車の重さです」
●あぁ。F3が車重550キロ、Fポンは670キロで、約100キロ違います。ブレーキをかけると、前輪に車重が乗っかかっていくわけですけど、その感覚が違う?
「ブレーキングっていうよりも、コーナー全てで違いますね」
●さっきの予習ということでいうと、今年は金曜日のフリー走行がなくなったから、走らせる時間が減って、予習ができないから、ルーキーには厳しい年なんでしょうか。
「うん、まぁ、そうですかね。でも金曜日に走らないのはみんな条件が一緒だから」
× × ×
「カノジョ? いません(小声で)。……っていったら、
なにかいいことあるんですか?」
●そんな国本さんが、これまでのレースを通して、人生で学んだことはなんでしょうか?
「やっぱり人生は一度しかないものなので、何事も楽しむってことですかね。プラス思考に考えて、笑顔で。メンタルトレーニングもしてるんですよ」
●笑顔がいっちばん、大事ですか?
「大事ですね。気持ちの上り下がりをできるだけなくして。レースの時はいつも一定の気持ちでいることです。ずっとトレーナーの先生についていただいて、やっています」
●メンタルのトレーニングは、具体的にはどんなことをやるんですか?
「それは企業秘密」
●にゃ。。。そこを知りたいのに……あっさりと。
「だめですよ。言えません(笑)」
●ちょっと、さわりだけでも……。
「ノーです(含み笑い)」
●鉄壁のブロックだー(笑)。というわけで、一貫してに平常心でお答えいただいた国本選手へ、最後の質問。いま、彼女はいますか?
「いませんよー」
●…………………。
「いません。……っていったら、なにかいいことあるんですか?(笑)」
国本京佑(くにもと・けいすけ)PROFILE
1989年1月9日、神奈川県生まれ。7歳でカートレースデビュー。2004年には、全日本カート選手権FAクラスでシリーズチャンピオンとなり、翌年、フォーミュラトヨタのスカラシップ訓練生に抜擢。2008年にF3、スーパーGT300に参戦すると、スーパーGTでは史上最年少優勝。F3では3勝を上げ、ランキング2位。マカオGPの出走権を手にし、マカオGPでは見事優勝。2009年はフォーミュラニッポン参戦中。スキー、ボクシングの腕前も相当な運動センスの持ち主。現役大学生ドライバーでもある。
公式ブログ『国本京佑blog』は、こちら
<取材後記>
F3の世界王者決定戦に勝つ男ですから、こちらは勝手に、熱血ばりばりの若者を想像していたら……国本京佑選手は、終止冷静な方でした(汗)。さすが、メンタルコントロールが完璧な青年(最後だけちょっと乱れて、おちゃめな一面を見せたか?)。サーキットの上だけではなく、これから、人生という名のレーシングをドライビングしていく彼。みなさんで応援していきましょう。
というわけで、国本京佑選手から、レースクイーンへのピット指令。
「先輩ドライバーを見てきたレースクイーンのみなさん、僕と同じ年くらいでもあるし……。『こんなドライバーは魅力的だ!』というポイントを、僕にこっそりアドバイスしてください!」
(構成・文/スケタケシン)
★★★インタビュー百番勝負<過去記事>もあわせてチェック★★★
007 土屋圭市 【後編】「行け。なんかあったら俺が責任を取る」
005 土屋圭市 【前編】「D1では『バカ』が最高の褒め言葉だ」
国本選手も激走中!
全日本選手権フォーミュラ・ニッポン2009
最終 第8戦◯スポーツランドSUGO
公式予選/2009年9月26日(土) 決 勝/2009年9月27日(日)
お見逃しなく!