パステルな表情の方がハマるーー。

彼女が真骨頂を見つけた瞬間。

新人RQの最初の仕事は、自分の魅力に気づくことだ。ひとりの男としては、自分の魅力に気づいていない時の女性が最も魅力的だと思うが、人前に出る仕事となると話は別。客観的に自分を捉え、売りになる部分を押し出していかなければならない。そんな視点で新人を見渡した際、気づき始めているRQがいた。「52ANGEL」として活躍中の徳永未遊だ。

大抵の新人とは開幕戦が初顔合わせとなる。しかし、彼女と初めて会ったのは「SUPER GT」開幕直前。所属事務所が主催したRQ研修会に、矢沢が講師のひとりとして招かれた時だった。講義以外にも、参加者全員を個別に撮影したのだが、卒なく撮影をこなすキャリア組に対し、新人は一様に緊張した様子。中でも徳永未遊は、笑顔を作ろうと必死のあまり、口角を上げすぎ、頬骨が目立ってしまっていた。それでいて目が笑っていないため、余計に硬く見えてしまう。「一人前になるには、ちょっと時間がかかるかもな……」そんな第一印象だった。

次に会ったのが開幕戦。初めて彼女のコスチューム姿を見たが、さほど変化は感じられなかった。無理もない。一週間しか経っていないのだ。帰宅後、写真を見返してみるが、印象はサーキットと同じ。記事制作のため、画像を選ばなければならないが、これといったカットが見つからない。困りながら、一枚一枚画像を開いているうちに、あることに気づいた。笑顔が硬いなら、笑わさなければいいんじゃないか……？

それを実践したのが第3戦だった。最初は指示を出さず、相手に委ねることに。すると、彼女の側にも変化が見られた。こっちの思惑を察したかのように笑顔のポーズが少ないのだ。クールな表情が多くなっている。「２か月の間に、だいぶ成長したみたいだな」。最初は好意的に受け止めた。しかし、途中で成長過程に見られがちなブレであることに矢沢は気づいた。

↑第3戦のクールversion.。この時は先輩に感化されていたのかな？

なぜなら、彼女を取り巻くこのチームのメンバーは、いずれもクールなお姉さまキャラなのだ。新人が、諸先輩に感化されても不思議ではない。しかし、長い目で見た時、クール路線は彼女の進むべき方向ではないように感じられてならなかった。そこで具体的なアドバイスをすることに。

「優しそうな表情にしてみようか」。「ちょっと、寂しそうな表情できる？」。時間の許す限り、徹底的に試した。すると、こちらが想像した以上に順応できる。これだ！ 徳永未遊はヴィヴィッドな表情よりも、パステルな表情の方がハマる。真骨頂を見つけた瞬間だった。しかし、その想いは一方的なもの。彼女がどのくらい汲み取ってくれたかは未知数だ。

そして迎えた第7戦。第3戦から４か月以上が経過している。果たして、彼女は自分の魅力に気づいているのか？　興味はその一点しかなかった。すると！ メンバー4人中、最後に登場した彼女は、目の前で撮影されていた諸先輩のパフォーマンスに、なんら影響されることなく、自分の持ち味を生かした柔らかい表情を、次々と繰り出してくる。まるで、何か吹っ切れたかのよう。自分の持ち味はこれなんだ！ という確固たる自信にさえ満ち溢れていた。

そうなるとチーム内での役割も変わって見える。これまでは、先輩に必死に着いて行っているようにしか見えなかった彼女が、キャラクターを差別化できたことで、持ち味が浮き立ってきた。新人RQにとって、気づくことが如何に大切なことなのか!?  矢沢もまた、徳永未遊の成長ぶりから、そのことを改めて気づかされた。